オレンジで働くスタッフインタビュー

オレンジの取り組みや職場環境について、現場で日々勤務するスタッフが語ります。
【5】山本勝司医師

自分の中にある「医療の常識」が変化する。ここではその連続です

山本勝司 プロフィール
1971年滋賀県生まれ。福井医大在学中より地域医療に関心をもつ。卒業後、福井県立病院で2年間研修、その際高浜町立和田診療所と、名田庄診療所で地域医療を学ぶ。現在は家庭医療を学ぶために、オレンジホームケアクリニックに勤務。医師になる前はスーパーで働いていた。

オレンジホームケアクリニックに
勤務したきっかけは?

 学生の時に、当時和田診療所の所長をしていた紅谷先生の勉強会に参加し地域医療に興味を持ちました。授業の合間に何度か和田診療所に見学に(飲みに?)いってました。卒業後は福井県立病院で初期研修を行い、林寛之先生ら人間性豊かなER医師のもと救急対応を学びながら、愛のハリセンで叩かれながら(笑)、どんな時でも患者・家族の立場も忘れずに診療を続けるという、今の私の行動指針のようなものを県立病院で体得できた気がします。
その後福井大学の「救急に強い家庭医養成コース」に後期研修として参加し、織田病院という地域病院で総合診療科・整形外科をした後、学生時代からお世話になっていた紅谷先生がオレンジホームケアクリニック(※以下オレンジ)を立ち上げ、誘いをいただき、平成23年10月よりオレンジで働かせてもらってます。

オレンジが取り組む在宅医療の特徴は?

 大学や県立病院のような大病院で私が学んできた事のひとつは、スタンダードな診断・治療を実践することでした。いわゆる疾患(Disease)中心の医療です。しかしオレンジでは診断・治療以上に、患者さんやご家族を含めたケアも積極的におこなっていると思います。病い(Illness)に真正面から向き合っているというか。病気のことだけでなく、病気になってしまったからこそ存在する様々な問題、普段の生活のこと、家族の介護のこと、患者さんの気持ち、さらにはヘルパーさんたち在宅スタッフたちが気持ちよく働けているかまで気を配る。そこまでするか!というくらい、患者さんの生活に入り込んでいく、いや、入り込んでいかないと「病い」のケアはできないんだなぁ、と最近よく思います。

オレンジで学んだことは何ですか?

 患者さんだけでなく、ご家族のことも常に気配る姿勢が身に付いたと思います。
オレンジで診る在宅患者さんは、病院より自宅で生活したいから家に帰ってきた、という人が大多数です。病院でないので、必要に応じてご家族が介護をすることになります。もし、そのご家族が倒れてしまうと、患者さんの在宅生活も破綻します。となれば、「ご家族が健康であること」が大前提であり、診察の際は常にご家族が介護できているか、疲れてないかに気を配るようにしています。もしご家族に負担がかかっているようなら、医療知識を持つサブケアマネージャーとして(?)、必要に応じて看護・介護サービスの調整、フォロー、助言をするように心がけてます。これは1つのSkillだと考えますし、在宅、オレンジでこそ身につけられるSkillだと思います。

 病院と在宅では、ご家族の「ありがとうございます」の重みが違うように思います。
たとえば、病院で主治医してると、「(おばあちゃんを治療してくれて)ありがとうございました(ペコリ)」としていただきます。
在宅で、たとえば夜間往診でご自宅で診療治療した後は、「(私たちの不安をとってくれて)ありがとうございました(ペッコリ)」。ご家族のキモチの裏側には、《急におばあちゃん熱が出て、つらそうだし、どうすればよいのか判らなくて、本当に参ってました。(こんな時間に)往診してもらって、本当に安心しました。ありがとうございました。》という気持ちがあるように思います。
語弊があるかもしれませんが、「病院では患者1人を治療・お助けするが、在宅では、患者だけでなく、複数人の家族もお助けする」ような気もします。

 患者さんと一緒に考えていくこと。これぞ「患者中心の医療」だと思います。
在宅での診察を繰り返し、「ふだんの生活」が見えてくると、その人の考え・価値観も見えてきます。 同じ病気10人いたとしても、病気に対する考え方は10人それぞれです。いろんな考えがあって当然だと思います。 今まで以上に、「患者さんの想い」を尊重した診療をするようになりました。一緒に診療計画をたてるということ。病院でのスタンダードな治療が在宅では必ずしも正しいわけでないということ。
もし患者さんが「したくない!!」というなら、できる限り尊重をとは考えてます。だけどもし、「病院行きたくない!」という患者さんの想いを尊重するなら、自らの診療能力で患者さんの生活・予後が左右されうる。責任感!!勉強すること、臨床能力を上げること!今まで以上に、「勉強し続ける意味」を強く感じます。

 薬なしでも治ることってあるんだなぁ、と、オレンジに来てよく思うようになりました。今も週1回は他病院で外来させていただいているのですが、たとえば不定愁訴の方が来られたとして、昔の自分だったら抗不安薬を出してたかもしれない。薬に反応する気配がないと、若干あきらめモードになってたかもしれない。
でもオレンジでの診療スタイルが次第に身についてきたのか、患者さんがどんな気持ちなのか、どういうふうに今の状態を考えているのか、生活にどんな影響がでているのか、何を期待して外来にやってきたのか、までしっかり聴取して、必要なら家族背景まで踏み込んで、そんなアプローチが今では外来の中でも自然とできるようになってきたと思います。
患者さんの不定愁訴の原因は以外と家族関係にあった、それに介入するだけで薬を使わずに不定愁訴が治った!なんてことが、ときおりみられるようになりました。
普段の一般外来での診察スタイルもかわってきたなぁ、と最近よく思います。医師として、Medication以外に治療の幅がひろがったと思います。こういういわゆる家庭医的なアプローチを学ぶには、オレンジは最適だと思います。